イギリス留学の途中過程

肌合いのようなものがやはり共通だという気がして、このグループには独特の暖かみを感じた。

たまたまHのおかげで、アメリカのアジア人たちと接点をもつことができたのは、大きな喜びであった。 ランゲージ・エクスチェンジからだいぶ話がそれてしまったが、私の留学をたいへんユニークなものにするのに一役買ってくれたパートナーを、もう1人紹介しておきたい。
Mのようなシルエットの男性、S・Gである。 実は、私と同期のフェローだったテレビ記者の女性が、学内に貼紙を出してゲットしたエクスチェンジ・パートナーというのがこのSで、彼女が帰国したあと私が引き継いだのだった。
しかし私はもっと前、最初の学期にアメリカの貿易政策の授業に出たときから彼を知っていて、彼が編集に参加していた学生新聞に、日本の総選挙記事を依頼されて原稿を書いたことがあった。 Sは、以前、徳島で英語を教えたり、ソフトウェアの会社で働いたりしたことがあり、日本語がかなりできた。
特に、「お聞きする」などの敬語の言い回しが自然にできているのには驚いた。 「職場で、僕のまわりはセクレタリーが多かったから」と言うのだが、日本語を使うと突然、「そ−おでしょ?違うのぉ?」などと、言い方が女っぽい感じになるのが面白かった。
もっと意外なことに、Sには尺八という趣味があった。 日本にいる尺八のアメリカ人S。
このあと再び来日し、尺八の師範を取ったのだ。 ころから習っていて、すでに準師範の腕前であった。
ニューヨークでは、日系人の老人ホームで尺八を吹くボランティアもしていた。 来日して初めて尺八を見たとき、「穴が5つしかなくて簡単そう」と思い、習う気になったらしい。
その時点で、彼はまだ、シンプルな道具を高度な技術で無限に使いこなす、東洋の文化スタイルに気づいていなかったと見える。 ある日Sに、私がバイオリンをニューヨークに持ってきた、と言ったら、ぜひ一度、尺八と合わせてみたいね、という話になった。

夏休みに、私たちはセントラルパークに練習をしに行った。 彼の持っている尺八用の楽譜を使い、日本の童謡などを弾いた。
私は、尺八の楽譜というのを生まれて初めて見たが、カタカナで縦書きになっていて、「ドレミ」も、「シ」とか「ヌ」とか、違う言い方をしているのが面白かった。 弾きながら、どうも合わないのでおかしいと思い始めた。

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